エノキダケイコの日常

映画、本、旅行のブログを毎日楽しそうに書いているエノキダケイコの、それ以外の日常生活やお知らせを書くブログ。どれだけ書けば気が済むんだ!?

トム・ストッパード作・小川絵梨子演出「レオポルトシュタット」@新国立劇場

ガラスの動物園」をいい席で見たくて新国立劇場の会員になったので、他の舞台も見てみようと思って、二階席最前列の席を買って千秋楽を見てきました。

「レオポルトシュタット」って語感がなんともゾワゾワする・・・。ドイツ語っぽい緊張感とクールさがあり、整然とした語感。内容はオーストリアユダヤ系の家族が第二次大戦前後に翻弄され、散り散りになっていく物語なんだけど、整然としてクールな美しさのある舞台でした。

舞台中央付近にグランドピアノ、手前に10人くらい座れる大きなテーブル、さらに前の左側、中央、右側で人々が語り合っていて、右奥には(間違えててっぺんに「ダビデの星」を取り付けた)クリスマスツリー・・・と、広がりがあって見どころの多い舞台。A席だけど、二階席一列目から全体を俯瞰できて良かったです。

原作のトム・ストッパードの自伝的作品らしく、彼は劇中のレオと言う少年と同じくイギリスへ移住しています。劇中、彼が祖国に残した親戚のうち、戦後に再会したわずかな2人が口々にレオを責める場面があります。これはストッパードの自責の物語なのかな。創作を仕事にした人の多くは、いつか自分が抱えてきたものの集大成を発表せずにいられないのでしょうか。

賑やかな大家族の時間が、最後の場面では3人だけで、昔の家にはもう何も残っていません。幕が下りてから出演者全員が再登場すると、初めて涙があふれてきました。「ああよかった、みんな生きてた」みたいな本能的な安心感。これが、舞台にはあるけど映画にはない。だから昔の映画のなかには、悲劇的な終わり方のあとに唐突にフィクショナルな大団円が演出されることがあるのかも、と思いました。

このあとオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」のチケットを購入済、バレエ「コッペリア」が抽選待ち。一生に一度の文化的生活中だな私・・・。