エノキダケイコの日常

映画、本、旅行のブログを毎日楽しそうに書いているエノキダケイコの、それ以外の日常生活やお知らせを書くブログ。どれだけ書けば気が済むんだ!?

新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル マクベス/夏の夜の夢」@新国立劇場オペラハウス 2023.5.5~6

新国立劇場友の会」にたまたま入会し、演劇も見た、オペラも見た、バレエも見た。友の会の会費は、オペラシティの飲食店の割引で元が取れたので、もう何も見なくても大丈夫かも・・・と思っていた私ですが、どうしても一度挑戦してみたかったものがあります。それは「Z席」。公演当日の10時から発売される”見切れ席”です。S席13200円、一番安いD席でも3300円なのにZ席はわずか1650円。先日「コッペリア」で感動した新国立劇場バレエ団だし、シェイクスピアを踊るというのも私には新鮮に思えたので、9時55分にスタンバイして連打で購入。これが5月5日(金)のこと。私この劇場の公演って、発売日に買わないと全部売り切れてと思ってたんだけど、行ってみたら意外と後ろのほう(C席やD席)には空きがあります。5日と6日はキャストが入れ替わるし、Z席からはやっぱり舞台全体は見えなかったので、翌日の千秋楽のD席チケットも買って、2日連続で見てきました!(総額わずか4950円!)

 

【まず、座席について】

Z席は「舞台は見えません、声だけです」という条件で販売されています。とはいえ全く見えないわけではありません。むしろ「舞台全体を見るために乗り出してはいけない席」ですかね。4階席の脇や後ろに設定されてるのですが、私の席は(10時0分5秒くらいにクリックしたからか)左手いちばん前。一番前のほうに1列だけあるので、もしかしたら一番高いバルコニー席?などと妄想したことがあったけど違いました。言われたとおりに背中を背もたれにつけると、舞台の上手(向かって右手)1/3見えるかどうか。でもだんだん慣れてくると、お隣の方のポジションと自分の安全性をかんがみながら、迷惑にならない程度に浅めに座ると舞台半分くらいは見えます。とはいっても全体が見えないと何が起こってるかわからない場面が多く、もう少しおこづかいのある人はD席までを買うのが正解だなと思いました。ただ、すごく前の方なので演者さんたちの表情までよくわかるし、オーケストラピットが覗き込めるのはよいです。

6日のD席は、5日と反対、舞台むかって右手に近い4階席で、舞台全体とオーケストラの一部が俯瞰できるいい席でした。(※かなり遠いけどね)せっかくのダブルキャスト、片方だけこの条件で見るのはかなり偏っているので、感想もその辺は割り引いて見ていただければと思います。

 

【演目について】

マクベス

「夏の夜の夢」は妖精たちがいたずらをする可愛いお話なのでバレエ向きだと思うけど、「マクベス」は血で血を洗う復讐劇でバレエ化は難しそう・・・と思ったら実にこれが世界初演なのだそうです!すごいもの見た!

5日のマクベスマクベス夫人は奥村康祐と小野絢子。私のイメージどおりの堂々とした悪意あふれるカップル。自信過剰なマクベスと、知恵の回る妖婦。血の感触まで伝わってくるようなどろっとした味わいでした。

6日は福岡雄大と米沢唯。米沢唯はコッペリアではこのひと妖精だと思ったので、どうやって妖婦を演じるのか興味がありました。でも妖婦って感じではなかったな。どこかクールでドライな、腹黒いとか計算高いというより、悪魔が取りついたか、天性のサイコパスか、という趣き。そしてこの人はほんとうに表現が豊かなので、中欧あたりの画家がさらりと描いたきれいな悪女みたいに感じました。

 

・夏の夜の夢

5日の配役はオベロン速水渉悟、ティターニア池田理沙子、パック佐野和輝、ロバのボトムは福田圭吾。これすごく良かったなぁ。背中にちっちゃい羽根までついた妖精たちの可愛かったこと。池田理沙子の踊りはとにかく優美で品格があって可愛らしく、プリンセスという印象。パックの身のこなしはサーカスの軽業師みたいに軽くて、ロバくんは愛嬌たっぷりで何度も声を出して笑いそうになってしまいました。

6日はオベロン渡邉峻郁、ティターニア柴山紗帆、パック山田悠貴、ロバのボトムは木下嘉人。ティターニアは迫力たっぷりでどこかラスボス的。パックはちゃんとパックなんだけど、なぜか前日のほうがだいぶ軽く感じられました。ロバくんは、前日のほうが(※いい意味で!)アホっぽくて可愛かったなぁ。6日の演者さんたちのほうが、全体的に大人っぽくて達人感があったけど、この演目は若々しく軽く(+可能なかぎりバカっぽく)やっていただいてよいのかも、と思いました。

 

【全体的に】

私、ダンスを見るのって好きだわ。人の身体がこれほどまでに美しく動けるのか、と見るたびに感動します。これはダンスの種類問わず。オペラや演劇と比べて、言葉がないぶんバレエにあまり惹かれてこなかったけど、むしろ私がライブで見たいのはこっちだったかも・・・という気づきがありました。「Z席から見てみたい」という、だいぶ不順な動機で見に行ったのに、翌日もっといい席で見てしまうくらい。前にも書いたけど、ここまで研ぎ澄ませた芸術ってほんとに素晴らしいです。同じ人生なら、人間の暗いところ、悪いところに注目するより、人間の「粋(すい)」にときどきでもいいから触れるのって大切。

バレエ、また見ます。同じ値段なら、次はちゃんと先行予約でチケット取るわ・・・。