エノキダケイコの日常

映画、本、旅行のブログを毎日楽しそうに書いているエノキダケイコの、それ以外の日常生活やお知らせを書くブログ。どれだけ書けば気が済むんだ!?

ムソルグスキー作・マリウシュ・トレリンスキ演出「ボリス・ゴドゥノフ」@新国立劇場

オペラを通しでちゃんと見るのって人生何回目だろう。5回は見てないよな。という初心者です。原作も読んでいません。という前提でお読みください。

新国立劇場、近くに10年以上住んでるのに中に入ったことなかったので、先日初めて小劇場でお芝居を見て、「劇場」のあの雰囲気にうっとりとしてきたところ。でもやっぱり新国立劇場の真骨頂はこの大劇場ですね。幕間にスパークリングワインが飲めたりもして、なんとも素敵です。もう少しオペラの基礎体力をつけてから、私も幕間バルをそのうち経験してみたいです。(今はプログラム読むのに大忙し)

あえて前提知識ゼロで見てみました。しかも4階席。フレームが光っている立方体がごーっと音を立てて動いて、その中の人々や風景が内容に合わせて移り変わっていくの面白いですね。ごーっていう音がうるさい気もするけど、それを気にしないのがロシア的なんだろうか。で、ストーリーは、ボリス・ゴドゥノフってのは大変悪い領主で、最後は人民(というよりみんなスーツ着てるので官僚たちにも見える)に血まつりにあげられるという理解でよいですか?かなり障害の重い子どもが一人、どうやらすでに亡くなった子どもが一人。子どもたちに対する思いが重すぎて政治どころではない人です。昔はよい領主だったんだろうか。と思うと、スーパースターすぎて息子、娘をスポイルしてしまった過去のスターたちのことを思い出したりします。ボリスは極悪人とは描かれず、心の弱さに打ち勝てなかった男というふうです。

それにしてもワインの「おり」のような濃い血のりがすごい、怖かったです。殺された13人の子どもたちもけっこうショックだけど、最後の「血まつり」はもう映画でいえば「ミッドサマー」や「ウィッカーマン」のように怖い。そういう部分があったからか、このオペラは私には「オペラ」という特定の音楽芸術というより映画やお芝居の一種と感じられました。なので、演出が強すぎるとも、立方体の動きがうるさいとも特に思わず、そういう演出なんだなと思います。むしろ、普段毎日のように映画ばかり見ていて、クラシック音楽にもオペラにも縁のない私みたいな者こそ、初めてちゃんと見るオペラとして面白いかもしれません。

子役や主にコーラスを歌っていた方々を含めて、キャストの多さにも驚きました。海外からのキャストの数は少ないけど、どこの人かは見ていて全然気になりません。素晴らしいオーケストラの演奏、聞きほれてしまう美しい歌声、個性的で一本芯の通った演出、自然でゴージャスな演技。本物の、一流の芸術に触れると、たくさんの方々が人間の粋を集めて力いっぱいもてなしてくださっているように思えて、すごく幸せな気分になります。

オペラ苦手かも、と少し心配だったけど、行ってみてよかったです。また他の演目でチケット買ってみようと思います。