バレリーナって男性も女性も妖精みたい。地球の重力を超越できたかのように、羽根のようにふわり、ふわり、と舞い踊ります。言葉がなくても、表情と動きでなんでも伝える。繊細な演奏と、繊細なおどりと、完成度の高い舞台美術。バレエって人間の肉体を超えて神に近づこうとする天国の芸術みたいだなぁ。(それだけ身体に無理をさせてるのかもなぁ)
一流バレエ団のバレエを見たことは初めてではないはず・・・30年前にロンドンのサドラーズ・ウェルズに行ったはず・・・でもどのバレエ団のどの演目か記憶がない。そのくらいご縁がなかったのですが、新国立劇場の近くに住んでいることもあり、一度思い切って芸術に浸ってみようと思って「クラブ・ジ・アトレ(新国立劇場友の会)」の会員になってみたのでした。
年末の「くるみ割り人形」にも心が動いたけど、想像がつかないこちらの演目を選びました。でも原作者が同じで、両方とも人形がモチーフになっていることなど共通点もあったんですね。そしてコッペリアの振付をした故ローラン・プティのことは名前しか知りませんでした。クラシックバレエって全部美しくて愛にあふれていると思ってたので、彼の演出したまるでドラキュラみたいなコッペリウス博士の造形がすごく新鮮でした。(往年のドラキュラ俳優ベラ・ルゴシの影響もあったんではないかしら??)
演じたのはヒロイン スワニルダが米沢唯、恋人フランツが井沢駿、コッペリウス博士が山本隆之。スワニルダ、もう可愛くて可愛くてたまりませんでした。フランツと一緒に踊るときの息はぴったり。恋人同士というより完璧なチームという感じ。コッペリウス博士は、バレエってこんな動きもアリなんだと思って面白く見ました。
(でもバレエの動きって割と型があるのかな。動き自体が”意外だ”と思ったところはあんまりなかったです。意外性を期待してるわけじゃないですが)
コッペリア人形の演出も面白かった。扇子を動かすのは、幼児番組のライブショーのときみたいにリモートで操作するのかな・・・上手に踊ってるように見せたり、崩れ落ちたりする変化にまんまと気持ちを持っていかれました。
演奏は東京交響楽団、指揮はマルク・ルロワ=カタラユード。繊細でありつつ、楽しさが伝わってくる温かい演奏だったなと感じました。
バレエって舞台芸術のなかでは一番、宝塚と親和性が高い気がするな・・・。可憐で清潔な感じが。(たまたま、ここ数年ヅカオタとなった友達からチケットが回ってくることがあったので思い出しています)久しぶりに夢の世界に浸って、うっとりした貴重な時間でした。
人間って、総体として見ると戦争もイジメもするけど、こんなに美しい芸術や崇高な宗教建築を作るのも人間なんだよな。人間が作ったこわいものやみにくいものだけじゃなくて、時々はこういう美しさの粋に触れることって大事だなと思ったのでした。関係者のみなさん全員に感謝したいです。